「緋色の記憶」について
さて、顔合わせから10日ほど経ちますが、稽古が始まるまでにはまだ時間があります。
そこで、少し今回の作品についてお話ししたいと思います。
まず「緋色(ひいろ)の記憶」について。
この本は、2007年に読んだものですから、もう10年前ということになりますね。
いろいろな推理作家さんが選んだミステリー短編集が当時刊行されていたようですが、
その「謎」というアンソロジーの中の東野圭吾さんが選ばれた作品のひとつでした。
私は結構ミステリー好きで、本格派と言われるものから人が死なないものまで、様々な種類のミステリーを読んでいます。
その中で、この「緋色の記憶」という作品は、まず話の構成に魅かれました。
この作品のストーリーは、主人公の高見沢朝美が父の自殺の真相を探る、というものなんですが、実は主人公の高見沢朝美は、一度も登場しないのです。
構成は、彼女が出会って話を聞いた当時の関係者のインタビューと、当時捜査をした刑事と朝美本人の書簡からなっています。インタビューの中にも、彼女は出てきません。取材されている方が、一方的に独白している、というスタイルなのです。
読んですぐ、「これは舞台でやったら面白いんじゃないか」と思いました。
読んだ当時は会社を辞めて1年経とうかという頃。
しかし当時は基本的に自分ひとりで読んでいたため、このスタイルの面白さは複数人で読まないと伝わらない、と思い断念。
しばらく寝かしておくことにしたのです。
そして10年の時が過ぎ、Mido Laboに仲間が集ってくれる状態になった今ならできるんじゃないか、やってみたいと思いました。
そう考えると、本当にありがたいなぁと思います。
そういう構成の話なので、今回の舞台でも、あまり朗読という感じにはならないかもしれません。
もちろん本は持つのですが、読んでイメージしてもらう、というよりは、主人公になったつもりで関係者の話を一緒に聞いてもらい、共に真実に近づいていっていただければ…と思っています。
ちなみにこの「謎001」からは、もうひとつ「サボテンの花」という宮部みゆきさんの作品を、別のところで読ませていただいています。
そう考えると、かなりお世話になった本ですね。
もう帯はボロボロになってきましたが、大事にしたい本です。