朗読と芝居の間・本稽古⑧
この日の稽古では、今まであまりやってこなかった前半の中盤あたりを詰めました。
このシーンはつっちー(土橋建太)演じる民谷伊右衛門と、私(松井みどり)演じる民谷岩が中心となるシーン。最初の大きな動きが落ち着いた後にどうなったか…というような、つなぎのシーンです。
つっちーは、vol.6から連続してMido Laboに出演し続けてくれています。今やなくてはならぬ存在。登場人物に合わせた読みは安定感抜群です。
芝居と朗読の融合に興味を持っているというつっちー。今回は主演として物語のストーリーテラーとなることも多く、重責を担ってくれています。
私の演じる民谷岩は、いわゆる四谷怪談に登場する貞淑な妻では全くなく、理にかなわないことを何よりも嫌う気性の激しい女。
伊右衛門と出会う前から疱瘡で顔がくずれてしまっているところも、原作とは違うところです。しかしそれを物ともせず、顔を隠さず平気で出歩く強さを持っています。
このふたりが縁あって夫婦になるわけですが、そこに大きく関わってくるのがこの人…。
サノヨー(佐野陽一)演じる小股潜り(こまたくぐり)の又市。
口先で周囲を丸め込んで金をせしめるという小悪党ですが、独特の正義感があり、岩に伊右衛門を周旋します。
そして岩の父である民谷又左衛門。家族草子でもご一緒させていただいている青さま(青山伊津美)に演じていただいています。
体調が悪いという設定。体から力を振り絞って話すというシーンはとてもリアルで、かつきちんとセリフが届くのです。いつも勉強させていただいています。
さて、この日問題になったのは、この二人が激しく言い合うシーン。
直接相手にセリフをかけていると、つい普通のお芝居のようになってしまい、お客さまの方へセリフが飛びません。
Mido Laboでは、お客さまに客観的に舞台を外からご覧いただくのではなく、このシーンの中に入って登場人物たちの隣りにいるかのように臨場感を感じていただくことを目指しています。
となると、この二人の間だけでやり取りを成立させるのではなく、お客さまも巻き込んでいかなければなりません。この後、前を向いてやってもみたのですが、なかなかしっくりきませんでした。
この激しいシーンで、どうしたらお客さまをこのシーンに巻き込むことができるのか…この日は残念ながらタイムアップ。結論は出せませんでしたが、問題点を洗い出すことができました。
本を持つから成立する動き、本を持たない人間が本を持つ人間と絡む時の動き、セリフの言い回し…宿題がたくさん出ました。ひとつひとつ、課題を克服して面白い舞台をお見せします。
ブログではタカヤくん(陶國貴矢)のバージョンしかご覧いただいていませんが、出演者のコメントをまとめています。今回はキナコ(紀那きりこ)編をご覧ください。
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