又市と宅悦登場!本稽古⑥
本稽古6回目。この稽古から、各場面を細かく作り込んでいくことになります。
最初に全体をあたったのは、演出(菊池敏弘)が実際に役者が動くところを見て、役者のアイディアを聞き、演出のイメージを膨らませることが目的。
ここからはそれを経て、実際により細かく場面を組み立てていくことになります。
この日は最初の方のシーン。まずはこの人が登場です。サノヨー(佐野陽一)演じる又市。又市は「小股潜り(こまたくぐり)の又市」という異名を持つ男。口がうまく、いろんなことを口で丸め込んでうまく収めて、ついでにお金もいただきまっせ、という小悪党なんです。
しかし実は人の心の機微がわかる、優しくていい奴でもあります。とにかく頭の回転が速い。話を展開していく役回りです。
又市の仲間である、ホンちゃん(本多照長)演じる宅悦。こちらは「灸閻魔(やいとえんま)の宅悦」という名前がついている按摩さん。
又市とつるんでいるくらいですから品行方正、ってわけにはいきませんが、又市とは逆にいろんなことに疎い…特に色事にはからっきし疎い!でも愛すべきところのある人物です。
このシーンにも関わってくるのが、この人!つっちー(土橋建太)演じる、境野伊右衛門(さかいのいえもん)。
父親の切腹の介錯をした後、出奔。まるで糸の切れた凧のようにその日その日を生きる、笑わぬ浪人です。もちろんこの物語の主人公。話をひっぱる役割で、この辺りではストーリーテラー的な要素も持っています。
物語の最初の方では、又市と宅悦が話を引っ張ります。
まずは登場シーンから面白い!そして場面を立体的に変えながら、話が進んでいきます。
中央にいる3人が又市、宅悦と直助。直助はホッシー(星野恵亮)が演じます。奥にいるのがスズコー(鈴木幸二)演じる伊東喜兵衛、コウちゃん(一戸康太朗)演じる利倉屋(とくらや)茂介。
伊東喜兵衛は御鉄砲組の与力。利倉屋は薬問屋の旦那です。私(松井みどり)はこの日お休みだったキナコ(紀那きりこ)演じる民谷梅の代役。梅は利倉屋の娘です。
沢山の人が出てくるお話なので、どういう風にお客さまにお伝えするか、知恵を絞っています。
この日のひとつの試みが、宅悦の心象表現のシーン。
演出と演者のイメージのすり合わせを行いました。ここは良いシーンなんですよね…私は大好きなシーンです。小説に書かれたその人の考えや気持ちを、リアルとうまくバランスを取りながらお見せする工夫をしています。
演出、役者、お客さまのイメージがひとつになった時、とても面白い表現が生まれます。
このシーンも、サノヨーのアイディアで作ってもらっていますが、ここに最終的には演出の目が加わってシーンが作られていきます。
ホッシー、サノヨー、スズコーの三者会談。もう皆さんベテラン揃いなので、役者同士で打ち合わせて演出にいろいろなものを見せてくれます。心強いばかり!
しばらくはひとシーンずつ、ご覧いただいたように細かく作っていく作業が続きます。稽古を見ていても面白いので、最終的にどうなるのかが本当に楽しみです!
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