vol.15「ささのは さらさら」重松清
公演が終了したばかりなので、上演した2つの作品を写真で振り返ってみたいと思います。
まずは重松清さんの「ささのは さらさら」。vol.11が初演で、今回は再演です。キャストをすべて変えて、当然演出も変え、まったく違う作品となりました!初演を観たお客さまも、途中まで観たことのある話だとは気付かなかった、と言っていました(^^)
今回、ご来場したお客さまが最初に見る舞台は、こんな感じになっていました。
Mido Laboは舞台セットをこれまで使ってこなかったので、こんな布(短冊)でも目新しい感じがします!
でもこれ、作るの結構大変だったんですよ…(^^;;
小屋入り当日、全員で短冊作り。最初に演出(菊池敏弘)がイメージした形ではうまくいかず、次のスケジュールが迫る中、全員で知恵を出し合い、なんとか作り上げました!
こういう作業はやっぱり個性が出るもので、慎重に寸法を測りながら進める人、ざっくりで切り始める人など、いろいろで面白かったです。
予定時間を30分ほどオーバーしましたが、無事に作れた時には感動しました!
ちなみにこの短冊、何のために作ったのかというと、もちろん「ささのは さらさら」というタイトルからもわかるように、七夕の短冊が物語に出てくる、ということもあるのですが、短冊をプロジェクターで映す時に壁に直接だと上手く映らないので、それを投影するスクリーンとして作った、という意味合いが大きかったです。
こんな感じですね。この映像は前回作ったものを使ったのですが、劇場が違うのでうまく映すにはいろいろ大変だったようです。
この大変な作業を請け負ってくれたのが、けんちゃん(入澤建)。舞台には立てなくなってしまったけんちゃんですが、こういう見えないところで一生懸命作業してくれました。けんちゃんがやってくれなかったら、ここまで完璧に演出のイメージを実現できなかったと思います。
ありがとう、けんちゃん!
さて、お話の方ですが、この4人家族がメインです。高校生のミチコ(百鳥花笑)、弟のカズキ(中西南央)、お父さん(大橋達哉)、お母さん(石上貴子)。
実際本当に仲が良く、一緒にラスト近くのシーンのモデルになったのではないかと思われるホテルの庭を見に行って、イメージを共有してました。
これは「花笑ちゃんクルクル」と呼ばれていたシーン(^^)
お父さんがミチコを抱き上げてクルッと回るのですが、なかなかうまく回れず、おーはっしー(大橋達哉)は何度も練習してました。
おーはっしーのこの笑顔、いいですよね~。
このお父さんが病気で亡くなってしまうのですよ…。その辺りで「始まってすぐにもう泣いちゃった!」というお客さまもいらっしゃいました。
切ないですね…。
弟のカズキを演じたなおくん(中西南央)。
「えっ、子供じゃないの?」とお客さまがびっくりしていましたが、この表情、確かに少年にしか見えないですよね。
実際は23歳の立派な青年…というのもちょっと違和感あるかな。本好き男子で、Mido Laboはとても楽しんでくれたみたい。安定した演技力はさすがでした。
お母さん役のたーきぃ(石上貴子)。
ちなみに今までは「ターキー」と表記していたのですが、本人が書いているのを見る機会があり、「たーきぃ」とあったので、そちらに合せました。
ある意味とても可愛らしい、でも子どもの前ではしっかり、そして近藤さん(斉藤厳)の前では色っぽいお母さんを素敵に演じてくれました。
お父さんに「僕が大きくなるのも見てよ!」と迫るカズキを見守る母…切ないです。
前述しましたが、お父さんが亡くなるシーンが前半の山場。
このあたりのミチコの切ない気持、グッときます。
そのミチコを演じた百鳥花笑ちゃん。ひゃくとりはなえ、と読みます。本名です。
素直な地の文の読みがとても好評で、「地の文にすごく気持ちが乗っていて気持ちが伝わった」「感情の起伏がよくわかった」とお客さまからご感想をいただきました。
高校生くらいの女の子って、大人と子供のちょうど中間で、いろいろ悩みますよね。そういう微妙な年齢の女の子の気持ちをビビッドに、瑞々しく演じてくれました。
お父さんが亡くなって3年後、お母さんの再婚相手として現れる近藤さん。
演じたのは1年ぶりのMido Labo参加となるゲンゲン(斉藤厳)。この人はどんな役をふっても自分のものにするので、演出が絶大な信頼を置いている人です。
今回も真面目で実直な近藤さんを好演してくれました。結構モノローグも多かったのですが、誰よりも早くセリフを覚えるなど、取り組み方も素晴らしい人です。
その近藤さんを激しく拒否するミチコ。
難しい年ごろ。お父さんが大好きだったミチコとしては、お母さんがお父さんを忘れてしまったような気がして、面白くありません。
近藤さんとミチコの直接対決のシーン。
ホタルを見にやってきたのですが、お母さんとカズキは親子探検ツアーに行ってしまい、近藤さんとミチコでホタルを見ることに。
初めてふたりっきりで話すことになったミチコのドキドキ感が伝わります。
そして話すうちにひとつ大人への階段を上り、近藤さんを受け入れようとするミチコ。
お父さんが登場するシーンは幻想的です。
成虫になってからは1週間しか生きられず、その間に水しか飲まずに繁殖をするというホタルに、若くして亡くなってしまったお父さんを重ねる…という演出イメージ。
美しい照明と音楽で、とても切なく、また印象的なシーンになりました。
それぞれの願いを短冊に書くことになった4人。
ここで近藤さんが書いた「ご家族が幸せになるのをお手伝いさせてください」に、思わず涙腺が緩んでしまった…という声が多かったです。
近藤さん、いい人だ…。
そしてラストシーン。
お父さんはいつまでも、4人の心の中で生き続けるんでしょうね…。
ここのシーン、照明の明転になるタイミングと、カメラの「カシャッ」というシャッター音の入るタイミングは、実は演出が一番こだわったところでした。
しかしそこはさすがプロの照明さん&音響さん。ものすごく気持ちいいタイミングで明かりと音が入り、鳥肌が立ったと演出は大満足していました!
この「ささのは さらさら」では、とにかく「泣いた!」という方が多かったです。ミチコの気持ちの複雑な変化を、お客さまは自然に感情移入して観てくださっていたようですね。
重松清さんの世界をお楽しみいただけていたら、嬉しいです。