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Mido Labo が地の文を読む時に大切にしていること


さて今回は、地の文についてです。Mido Labo が地の文を読む時に大切にしていることは、いくつかあります。

小説の「地の文」は、状況や登場人物の心の動きを聴き手に説明します。

戯曲の「ト書き」は説明がメインなので、芝居の本読みではこの部分を感情的に読むことはあまり好まれません。

しかしMido Laboのように小説を舞台で読む時には、もちろんそれとは違う表現になります。

なぜなら、この「地の文」にこそ、その作家さんの個性が色濃く表れると思うからです。

作家さんは使う言葉はもとより、文体、文章の長さ、文字の表現の仕方など、様々なところに個性を発揮しながら、独自の世界を作っています。

ですからMido Laboでは、そこをうまくすくい取って、舞台という3次元の世界で表現したいのです。

例えば、前回vol.13で取り上げた松本清張と江戸川乱歩という作家さんは、とても対照的でした。

清張さんは骨太な言葉を使っていて、1文がとても短い。対して乱歩さんは話し言葉、それも主人公の女性の言葉をそのまま書き起こしたような文章なので、同じことを何回も言ったり、1文がとても長かったりするのです。

松本清張「天城越え」の地の文を読んだ土橋建太は、心の動揺を大きく表現するのではなく、年配の男性らしく抑えた表現で読んでいました。

また江戸川乱歩「人でなしの恋」を読んだ石上貴子は、女性の揺れ動く心を情感いっぱいに表現し、乱歩独特のあやしげな雰囲気を表現していました。

このように、地の文がMido Labo の舞台の中心であることは間違いありません。

ではこれだけ大切な地の文だから、ものすごく稽古をするんだろう…と、ここまで読んでくださった方は思うでしょうね。

…しかし実際は、あまり稽古はしないのです。

というと語弊がありますが、個人ではかなり稽古してきてくれますが、全体稽古ではあまりやらないということです。

実は地の文の読み方は、ここまでのMido Labo では、読むことになった人にほとんどの部分が任されているのです。

逆に言うと、何もしなくてもこの作品にはあなたの読みが合う!という人か、自分でいろいろ考えて表現してくれる力のある人にしか、基本的にはお願いしていないのです。

しかしもちろん演出がないわけではありません。

「ここは静かに溜めてほしい」

「ここまでの気持ちを全部ぶつけるくらい激しく!」

というようなことは伝えます。

そこからの表現方法は、その人の個性を大切にしたいのです。

Mido Labo では、いろいろな意図を持ってキャスティングします。

ですから、最初からその人の個性を作品に当てはめているのです。

その上で、必要と思うことのみ伝える…こういう形で、過去のMido Labo作品は作られました。

その中で、演出をしている菊池敏弘が大切にしている考え方があります。

「地の文を読むだけのナレーターは作らない」

1人称で語られる物語は、主人公が心で思っていることがそのまま書いてあることが多く、そういう時は、主人公役の人がそのまま読むことが多いです。

しかし3人称で語られる物語の場合、いわゆるナレーターとして、物語の説明を一手に引き受ける役目の人を作る舞台も多いのですが、Mido Laboではその役をおかず、いろいろ工夫して読んでいます。

過去の例では、登場人物が飼っていた猫の目線(目線を借りるだけで、猫から見た描写がされているわけではありません)を使って読んだり、実際そこにはいないけれど、その場面の話の中心となっている人が読んだりと、ナレーターをおかない表現を常に模索しています。

なぜなら、vol.1からずっと演出してきた菊池の「ただ状況を説明するだけではなく、地の文にもきちんと感情を入れて読んでほしい」という強い想いがあるからだと思います。今ではそれが、そのままMido Laboの方針となっています。

その作品ごとに、誰が、どんな風に地の文を読んだら、その作品世界を舞台上に再現できるか、お客さまにリーディングトリップしていただけるか、常に試行錯誤です。

その結果、その作家さんや作品のファンという方に「小説も良かったけど、舞台も楽しかったです!」と言っていただけるのが、珠玉の喜びです。

実際はこんな風に進めていますが、これからは興味のある方に読み方をお伝えし、ブラッシュアップしていただく活動もやっていこうかと思っています。

ですので、今回のワークショップでは、そのあたりも詳しくお伝えしていく予定です。人前で読むのは初めて…という方も、楽しくできる方法を考えますので、どうぞお楽しみに!

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