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vol.2 紅雲町珈琲屋こよみ2「クワバラ、クワバラ」


日時:2015年4月12日(日) 14:00~ 会場:下北沢亭(下北沢駅南口より徒歩5分)     東京都世田谷区代沢5-29-9 2F 料金:2500円(1ドリンク付き)全席自由 出演:松井みどり 竹内道郎(ギター) 原作:吉永南央 演出:菊池敏弘 スタッフ:北村真一郎 金純樹

コーヒー豆と和食器の店・小蔵屋(こくらや)の店主である76歳の杉浦草(そう)は、未収代金の伝票に気付きます。しかも請求先には、小学校の同級生の名前がありました。

…話は10年以上前にさかのぼります。もともと小蔵屋は草の両親の代まで雑貨屋でした。その両親が亡くなりひとりになった草は、人生の最後に自分の好きなコーヒー豆と和食器を扱う店に、建て替える決心をします。

古民家風の造りにしたくて良い木材を探していた時、適当な古い家が見つかったと聞き、草は、当時まだ脳梗塞発症前で元気だった、幼馴染みの由紀乃とともに出向きます。その古い家は解体されることになっており、タダで譲ってくれるというのです。

木材は申し分なく、実家であるその家を引き継いだ姉妹の姉、松子との話は順調に進みます。ところが遅れて現れた妹の秀子(ひでこ)に、草は驚きます。彼女は小学生の時の同級生で、草にいじわるの限りを尽くした「クワバラの秀子ちゃん」だったからです。

その後、秀子は突然小蔵屋にやって来ては、以前のように草を困らせます。憤りを感じながらも、再び松子を訪ねた草は、そこで松子から、秀子がひねくれてしまったわけを聞かされるのです。

松子と秀子の父は材木商で、当時は裕福な暮らしをしていましたが、知人に騙されて家業が大きく傾き、秀子が生まれる頃には暮らし向きはかなり苦しくなっていました。そして秀子が生まれる頃、父が酔って「こんな時に子供なんかいらない」と言っていたのを他の兄弟と松子が話している時に、それを8歳になった秀子が聞いてしまったです。草は、秀子の意地悪は、自分が父と仲が良かったことが原因だったのだと気付きます。

その後草は、大手家電メーカー会長夫人となっている秀子を訪ねます。そして、松子から譲り受けた屏風を修理した時に見つけた、古い和紙を秀子に見せます。そこには、秀子が生まれる前に父が書いた、秀子への祝いの品の数々がありました。実際には何ひとつ買い与えることができないことを知りながら書いた、父の乱れた筆跡。他の兄弟と同じように父から愛されていたことを秀子は初めて知り、涙します。

小蔵屋は無事に開店の日を迎えます。秀子は店には姿を見せませんでしたが、お祝いの花を送ってきました。電話をすると、以前より少し丸くなったようでした。

…それから10年余り。その後は連絡を取っていなかった草が、未収代金の件で秀子の自宅に電話を入れると、なんと秀子は家出をしていることがわかります。心配する草と由紀乃ですが、草はふとある場所を思い出しました。

以前、松子と秀子の実家があった場所に建てられたペンションに、秀子はいました。小蔵屋から送ったコーヒー豆はある男性の快気祝い。すでに夫に先立たれた秀子は、その男性との関係を長男に詮索されたのがきっかけで、家を出ていました。

しかし結局その男性は、もっと落ち着いた付き合いがしたかったと言って今後の付き合いを断り、長男も迎えにはこない。秀子は一度家を離れることで、自分の本当に大切なものを確かめようとしたのでした。

子どもの頃から変わらない山から吹く風。変わるもの。変わらないもの。相変わらず素直ではない秀子でしたが、同じく長い年月を経た者として秀子の気持ちを感じた草は、秀子の気持ちがおさまるまで、その場で一緒にその風を感じていたのでした…。

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