vol.12稽古⑬
この日はちょうど稽古の半分が終了、という日。今週中にどちらの作品も最後までひと通り当たれそうだし、まずまず順調…と思っていたのですが。
演出(菊池敏弘)のひと言で、状況が一変しました。
「うたかた」の演出を、根本からもう一度考え直したい。
…おーっと。
各自の心の中の声はわかりませんが、大体こんな感じじゃないでしょうか。今までやってきたことがガラッと変わるということは、過去にもありました。しかしそれは、そのシーンで演出が「こうしたらどうだろう?」という確固たる意志を持っている場合。今回のようにイチから考え直すのは、初めてです。
演出によると…主人公・房子を立ち上がらせたいが、今の演出では周囲に埋没してしまっている。読み手についても、今のやり方が効果的かと言われると、そうとも思えない。この話の大切なポイントが浮き立ってこない。
…とのこと。少し前から違和感を感じていたらしいのですが、いよいよこのまま進まない方がいいんじゃないかと思うに至ったということです。
そして、話の最後に「…と思うんですが、皆さんどうでしょう?」
そこから1時間くらいかけて、みんなで意見を出し合いました。この作品で見せたいところは何なのか。大切なことは何なのか。それはどうしたらわかってもらえるのか。
ひとつの作品を作っていく時、この作品について他の人がどう思っているのかということを話す時間は、意外とない気がします。どうしても、このシーンはどう動く、とか、ここではどんな気持ちで…といった、具体的なシーンについての話が多くなります。
図らずも、「うたかた」という作品について各自がどんな風に思っているのかを出し合うことができたのは、有意義なことだったと思います。
で、どうしたら演出の危惧していることが解消できるのか。
ここからはもう、とりあえず思ったことを口に出していきます。実現できるかどうか、本当にいいのかどうかは置いておいて、思いついたことを話してみる。
そうすると、それは面白い!という人がいたり、でもこの話でそれをやるのは難しいかな、という人がいたりと、その意見に対する意見がまた出てきます。
最終的にその整理をするのが演出。この日は、とりあえずこの方向でやってみよう、と仮決めをして、稽古をスタートしました。
演出が気になっているシーンを、椅子の位置、話す向き、立ち方、読み手など様々に変えながら、何度も繰り返しやってみました。
とりあえず具体化してみる。見える化とも言いますね。これ大事。
やっぱりね、実際見てみないとわからないことが、結構あるものです。
この日は、その後いろいろやった上で、以前のものに戻ってみたところ、少し修正すればこのままでもいいかもしれない…というところまでいきました。これも、いろいろやってみたからこそ、わかった部分だと思います。
試した中で有効だと思ったことは取り入れ、演出が次回の稽古までにまとめてくることに。一時はどうなることかと思いましたが、少しだけ方向が見えてきたようです。
ここへ来ての大激震でしたが、逆に言うと、このタイミングで良かった。まだ稽古時間は十分あります。みんなの力を合わせて、さらに面白いものへ作り上げていきます!
稽古終盤は、「サボテンの花」の稽古。こちらはいよいよ、ラストシーンです。
前回の稽古で出たアイディアを形にしてみたところ、このままでは難しいけれど、工夫をすれば面白くなるかもしれない、ということで、一応採用になりました。タイミング、やり方などを、もう少し詰めていきます。
ラストシーンも遂に完成!…あ、もちろん今のところですけどね。過去にない、斬新なものになりました。ただ、照明や音響などとの兼ね合いもあるので、全体像が見えるのは少し先かもしれません。
振り返ると、本当にいろいろなことがあった、濃い稽古でした。でも俯瞰してみると、少しずつですが着実に進んでいると思います。
作っては壊し、また作る。まさに、全員でパーツを組み上げている感じ。また次回の稽古が楽しみになりました。